ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「あ、それから一つ言っておきますけど、この子たちに限界なんてものはありませんよ?」

「なに?!」

「この子たちはあればあるほど食べ尽くすんです。きっとこの世界に精霊たちが居なくなるまで、食べることは辞めないと思います」
 
その言葉に俺の体に鳥肌が立った。
 
無限に魔力や精霊たちを食い続ける怪物。俺はその話をある魔法書で見た事があるのを思い出した。

七罪の悪魔と呼ばれた者たちの中に【暴食の悪魔】と呼ばれる存在があった。
 
それは存在するもの全てを喰らうと言われ、七人の悪魔の中でも最も最悪な存在だと言われた。

まるでその暴食の悪魔って言うのが、この黒い粒子の事を言ってるような……。
 
そんな事を考えていた時、俺たちを守っている神の守りにヒビが入っていく。

「くそ……ロキ! お前だけでも逃げるんだ!」

「はあ!? そんなこと出来るわけないだろ! 馬鹿なこと言ってんじゃねぇぞ!」
 
ロキのその言葉にカチンと来た俺は更に言葉を続けた。

「お前だけでも助かってほしくてそう言っているんだぞ!」

「友達を置いて逃げるなんて、最低なやつがやることだ! 俺はそんな真似だけは絶対にしたくない! 例え何度同じ事を言われてもな!」

「……ロキ」
 
本当にこいつは……。

「お取り込み中のところすみませんが、僕も忙しいのでそろそろ良いですか?」
 
その時、神の守り全域にヒビが広がると粉々になって砕け散った。そしてそのまま、黒い粒子たちは俺たちに向かって襲ってくる。

「しまっ!」

そして俺たちはそのまま、黒い粒子の中へと呑み込まれた。

その様子を見届けたヨルンは、ニヤリと笑みを浮かべる。