ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「黒い粒子を体内に吸い込むと、自我を無くした化物になります。それをきっかけに、兎人族と狼人族たちが互いに殺し合う様に仕向けたんですけど、今のところほとんど停戦状態で、どうしようかと思っていた時に、あのソフィアさんの魔力を感じたんですよ」

「っ!」
 
まさかヨルンは……最初からソフィアをこの島に呼ぶために!

「いや〜、彼女のあの力は凄まじかったですね。僕も初めて魔人族を見たんですけど、共振の力は僕の予想を遥かに上回っていました。彼女の力とこの黒い粒子たちが居れば、この世界なんて三日保たずに破滅しますよ。あの世界のように」

「……あの世界?」
 
あの世界ってなんだ? ヨルンは何の事を言っている!?

「だから僕は竜人族の悲願の達成を願っていたザハラ様を利用して、君たちをこの島へと誘き出しました。ちょっと想定外の人も居ましたが、サファイアの魔力でも黒い粒子を止める事は出来ませんから」
 
その言葉と共に氷の中に閉じ込められていた黒い粒子たちが、氷を突き破って外へと出始める。

「あ、アレス!」

「くっ!」
 
今のヨルンはあの黒い粒子たちを自由に操る事が出来る。このままこいつを野放しにしたら、ソフィアの身が危ない!

「さあ、どうしますか? ソフィアさんの騎士さん?」
 
俺は力を込めていた拳を解いて、右手をヨルンへとかざした。