ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

先生の言う【彼女】と言う言葉を聞いて、酷く胸が締め付けられた。

私はまだ先生の言う彼女という人の話を聞いたことがない。

でも先生がその人の為に頑張っているってことは、きっとその人は――

『記憶を見たのか?』
 
頭の中に彼女の声が流れ、私は閉じていた目を開いた。

「うん、サファイアと……先生の記憶を少しだけ」
 
体中からサファイアの魔力を感じて力がみなぎってくる。

これが……サファイアの魔力をまとうということ、そして意識を一つにすると言うこと。

『出来るだけ時間を稼ぐ。あとは、あいつがどうにかするさ』

「えっ……」
 
もしかして……先生が来ているの?!

『さあ、私の後に続いてお前も詠唱を始めるんだ!』

「わ、分かりました!」
 
意識を集中させ魔剣サファイアを目の前にかざす。

『我の内に眠りし氷結の力よ、その全ての力を開放し、この森全域を覆い給え』

「我の内に眠りし氷結の力よ、その全ての力を開放し、この森全域を覆い給え」
 
私たちの詠唱によって、体の中に眠っていた氷結の力が強くなってくるのを体で感じた。

体中に氷結の力が駆け巡り、額に血管が浮き上がりドクドクと脈打つ。
 
体から大量の冷気が発せられ、私の居る場所を凍らせていく。

「永久凍土!」
 
その言葉と同時に地面に向かってサファイアの刀身を突き刺す。

するとサファイアの刀身を伝って開放された氷結の力は、一斉に森を凍らせていく。

辺り一面が氷結の力によって覆われていくのを見守りながら、私は更に意識を集中させる。

『気を抜くなよ、カレン。あの黒い粒子の力は強大だ』

「はい、分かっています!」
 
先生がこの島に来ているんだったら、先生だったら絶対に何とかしてくれる。

今の私に出来る事は、黒い粒子の侵食を止めること。

後は、きっと先生が――

「っ!」
 
その時、頭に酷い頭痛が走った。

一瞬目の前がぐらりと揺れ、私は地面に片膝をつく。