ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

そんな私を優しい笑顔を浮かべて見下ろしている彼女は、直ぐに東の森へと目を映した。

「カレン。悪いけど、今は喜んでいる時間がないんだ」

「そうだ……東の森の方が急に黒くなり始めて!」

「ああ、知っている。これは早急に対処しないといけない問題だ」
 
そう言ってカレンは遺跡の方を見上げると目を細めた。その姿に首を傾げた時、サファイアは私へ目を戻す。

「あいつが言っていた闇の魔力の原因はあれか……カレン。お前は【黒い粒子】について、あいつから話を聞いたことはあるか?」

「黒い……粒子」
 
確か先生が言っていた。
 
黒い粒子は私たちが普段吸っているマナが、更に猛毒になった状態のことで、雫を体内に宿していたとしても、それだけでは完全に毒を浄化しきれず、そのまま雫は毒に侵されていき、雫の持ち主を怪物へと変えてしまうと。
 
そしてそれはこの世界が出来る前に引き起こされた、九種族戦争の火種にもなったと言っていた。

「まさか……今回はその黒い粒子が原因だって言うんですか?!」
 
私の言葉に頷いたカレンは、再び東の森へと目を映す。

「おそらくあの何処かで、あちらの世界へと繋がる時空の割れ目が出来たんだ。しかしなぜ突然、時空の割れ目が出来たと言うんだ……。あの世界へ繋がる道は、完全に閉じているはずなのに」

「サファイア……」
 
先生は言っていた。あの世界では闇の魔力をこちらへ来させないために、トトが止めていると。

しかしその力がこちらへ流れてきていると言うことは、トトの身に何かあったと言うのだろうか?

「カレン。くれぐれもあの黒い粒子を吸うなよ。お前の身に魔剣の力が働いていると言っても、私ではあの力を浄化する事が出来ない」

「じゃあ……このまま見ていることしか出来ないの?!」
 
東の森にはロキたちが向かった。二人に黒い粒子を伝える時間さえ限られてしまっている! 

こんな時、先生が居てくれたら……。

「一時的だが、あの黒い粒子を止める手段がある」

「えっ?!」

永久凍土(ぺーマフロスト)の魔法だ」
 
永久凍土? 初めて聞く名前の魔法だった。

「時間がない。説明しながらやるから着いてきてくれ」

「は、はい!」
 
サファイアは魔剣の姿に戻ると私の右手の中に戻る。

『今からお前に私の魔力をまとってもらう。その後直ぐに、氷結の力を一気に開放する!』

「分かりました!」
 
サファイアの刀身が青白い輝きを放つと、それは私の目の前で集まり、すうっと私の体の中に入ってきた。

そして同時に頭の中を数々の記憶が流れた。