ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「焦りすぎ」
 
テトはそう言うと黄金の瞳を細める。

「焦ったところで何も始まらない。何も見えない。ただ己の心のみが追い込まれていくだけよ」

「で、でも!」

「周りを見なさい」
 
その言葉に俺は目を見張った。

「あなたの周りには誰が居るのかしら? それとも誰も居ないと思っているのかしら?」

「そ、れは……」
 
俺は一回自分を落ち着かせるため、深く息を吸って吐く。そしてソフィアを見つめた。

「俺には……ソフィアが居る。カレンやロキ、ムニンだって居てくれる」
 
そう、俺の側にはみんなが居てくれる。決して一人じゃないんだ。

「あなたは一人じゃない。あなたの側には、力になってくれる仲間が居てくれる。だから、焦ることはないのよ」

「……テト」

「ま、ロキはちょっと心配だけどね」

「あ、ははは……」
 
テトはいつでも周りをよく観察していて、的確な助言を俺たちにくれる。

もしかしたらそれは、ソフィアを思ってのことかもしれないけど、それでも俺は今救われた。

テトの言葉のおかげで大切な事を思い出す事が出来たし、落ち着く事も出来た。

「時間はたっぷりある。その中で必ずあなたは、もっと強くなっていけるはずよ」

「ああ、頑張るよ。必ずソフィアを守れるくらい強くなって見せる」
 
そう決心して、真っ直ぐテトを見つめた時だった。

「おい! アレスは居るか?!」
 
すると部屋の扉を勢い良く開けたロキが、慌てて部屋の中に入ってきた。ロキの後に続いてカレンも入ってくる。

「カレン! 目が覚めたのか」

「ええ、毒も抜けて今は大丈夫です。しかし、今はそんな事を言っている場合じゃないの」

「……何かあったのか?」
 
俺の言葉に二人は頷くと、ロキが窓の外を睨みつけた。

「さっき村に行っていたヨルンが慌てて帰ってきたんだ」

「ヨルンが?」
 
確かザハラに頼まれた物があるって言って、村まで買い物に行っていたんだったか。でも、何で慌てて帰って来たんだ?