✭ ✭ ✭
アレスの部屋に戻って来た僕は、そのままベッドの上で丸くなって目を瞑っていた。
「クソ…………」
テトがあんなこと言うから、嫌なことを思い出したじゃないか。
瞑っていた目を薄っすらと開き、夕日が沈みかけている外を僕は睨みつけた。
「確かあんな日も……こんな夕焼け空だったな」
血色のような夕焼け空を見ながら、僕は昔のことを思い出す。
それは僕が使い魔になる前に起きた事件だった。
✩ ✩ ✩
六十年前――
僕は狼人族をまとめ上げている長の家に生まれた狼人族だった。
ほとんどの子供なら、生まれてきたらみんなから祝福されるものだ。
それはどの種族だって同じだ。
でも生まれたばかりの僕は、誰からも祝福されることもなく、周りの奴らから異端児扱いをされた。
それは全部……この瞳のせいだった。
本来、狼人族に生まれてくる子の瞳は、深紅の瞳を持った子と決まっている。
しかし生まれてきた僕の瞳の色は…………黄緑色だった。
しかも長の家から生まれた子だ。僕は生まれて直ぐ家に泥を塗ったんだ。
なぜ、僕だけこんな瞳を持って生まれてしまったのか?
どうしてみんなと違うんだ?
周りから冷たい目で見られ、蔑まれ、異端児扱いをされ続けた僕は、幼いながらにも精神を病みかけていった。
でもそんな僕に、唯一手を差し伸べてくれたのが母上だった。
母上は僕を生んで直ぐに家を追い出された。
「この異端児を生みおって!」
「あんたも同じく異端者だ!」
「出て行け! ここに異端者など要らん!」
母上は何も悪くない。母上が追い出されたのだって全部僕のせいだ。
この世に生まれてしまったせいで、僕は母上の人生を台無しにしてしまったんだ。
でも母上はこんな僕に言ってくれた。
「あなたの瞳はまるで月光のよう。暖かくて、とても穏やかで優しい光」
だから僕は自分の瞳を少しずつ好きになれていった。
母上が居たから一人ぼっちじゃなかった。母上が居たから生きようと思えたんだ。
そう思い始めていた頃だ。
事件が起きたのは……。
アレスの部屋に戻って来た僕は、そのままベッドの上で丸くなって目を瞑っていた。
「クソ…………」
テトがあんなこと言うから、嫌なことを思い出したじゃないか。
瞑っていた目を薄っすらと開き、夕日が沈みかけている外を僕は睨みつけた。
「確かあんな日も……こんな夕焼け空だったな」
血色のような夕焼け空を見ながら、僕は昔のことを思い出す。
それは僕が使い魔になる前に起きた事件だった。
✩ ✩ ✩
六十年前――
僕は狼人族をまとめ上げている長の家に生まれた狼人族だった。
ほとんどの子供なら、生まれてきたらみんなから祝福されるものだ。
それはどの種族だって同じだ。
でも生まれたばかりの僕は、誰からも祝福されることもなく、周りの奴らから異端児扱いをされた。
それは全部……この瞳のせいだった。
本来、狼人族に生まれてくる子の瞳は、深紅の瞳を持った子と決まっている。
しかし生まれてきた僕の瞳の色は…………黄緑色だった。
しかも長の家から生まれた子だ。僕は生まれて直ぐ家に泥を塗ったんだ。
なぜ、僕だけこんな瞳を持って生まれてしまったのか?
どうしてみんなと違うんだ?
周りから冷たい目で見られ、蔑まれ、異端児扱いをされ続けた僕は、幼いながらにも精神を病みかけていった。
でもそんな僕に、唯一手を差し伸べてくれたのが母上だった。
母上は僕を生んで直ぐに家を追い出された。
「この異端児を生みおって!」
「あんたも同じく異端者だ!」
「出て行け! ここに異端者など要らん!」
母上は何も悪くない。母上が追い出されたのだって全部僕のせいだ。
この世に生まれてしまったせいで、僕は母上の人生を台無しにしてしまったんだ。
でも母上はこんな僕に言ってくれた。
「あなたの瞳はまるで月光のよう。暖かくて、とても穏やかで優しい光」
だから僕は自分の瞳を少しずつ好きになれていった。
母上が居たから一人ぼっちじゃなかった。母上が居たから生きようと思えたんだ。
そう思い始めていた頃だ。
事件が起きたのは……。



