ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「よお、カレン。ようやくだな」

「……ようやくって、何のこと?」
 
言葉の意味が分からずそう問い返した時、ロキは目を瞬かせた。

そして少し気まずそうに頬を掻くと言う。

「いや……言っただろ? 俺も凄いやつになるって」

「……えっ」
 
その言葉を聞いて私は目を丸くした。
 
もしかして……前に約束した事を覚えていたの?

「言っただろ? 俺も凄い奴になってお前の隣に立ちたいって、だから必死に魔法勉強して魔力高めまくって、そのおかげで今じゃ炎魔法なんて完璧に使いこなせるぜ」

「……そうなの?」

「ああ、それも全部お前と一緒にこの場所に立つために頑張った事だからな」

「っ」
 
ロキは頑張っていたのだ。

私が彼を避けるようになってからも、彼は私と同じ位置に立つためにずっと頑張っていて、私を追いかけて来てくれていた。
 
その事が嬉しかった私は泣きそうになって、慌てて彼から目を逸した。

「お? なんだよ、そんなに嬉しかったのか?」

「……別に、嬉しくなんか……」
 
その日私たちはそれぞれ、【氷結の魔道士】、【業火の魔道士】として同じ位置にたったのだった。
 
しかしその称号と立場が更に私自身を追い込む事になるなんて、この時の私は知るよしもなかったのだ。

✩ ✩ ✩

直ぐ側にあった椅子に上着が掛けてあるが見えて手を伸ばした時だった。

ロキはその手を掴むと私の体をぐっと自分の側へと引き寄せた。

「きゃっ!」
 
思ったよりも強く引っ張られた事に驚き、私は恐る恐る彼の顔を見上げた。

「そうやってまた全部一人で背負い込むのかよ?!」
 
その言葉に心臓が大きく跳ね図星を刺された。
 
「お前はいつもそうだ! 誰にも頼ろうとしないで、一人で何もかも背負込んで、勝手に悩んで勝手に苦しんで、勝手に一人で泣いている!」

「……ロキ?」
 
ロキは私の体を引き寄せると強く抱きしめたてきた。

気づいたらロキの腕の中に居た事に驚いた私は目を見開く。

彼の心臓の音が聞こえてきて、彼の温もりを感じた私の頬が熱くなる。

「そんなに一人で背負いこむなよ……。それじゃあ、俺が今まで頑張ってきた意味がなくなるじゃないかよ」

「えっ……だって、それは私みたいに凄い人になるためなんじゃ?」

「……そんなわけねぇだろ!」
 
ロキは私の体を抱きしめる腕に力を込めると言葉を続けた。

「俺が何の為に今まで頑張って来たと思っているんだよ! 俺はずっと、お前の力になりたくて頑張って来たんだ! お前が俺を避けていた時期も、俺はずっとお前を見ていた」

「……ずっと?」
 
まさかロキはずっと私を見ていたの? でもどうして? 

だって私は、あなたの目標にはなれない。あなたと同じ場所に立つ事が出来ないと言うのに。