ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

「ただサファイアに認められたってだけだと言うのに、その力を完璧に使いこなしているわけでもないのに、魔剣一本手にしただけでそんなに凄いことなのか?」

「……それは」
 
お兄様の言葉を聞いて私はそこで初めて悟った。
 
私と言う存在は、ただ魔剣が一本追加されただけの存在に過ぎないのだと。

たったそれっぽっちの事で、私は特別な存在になったのだと勘違いをしてしまっていた。

「カレン……お前が魔剣なんかに認められなければ、俺は今でも純粋な気持ちでお前を妹と思えただろうな。でも、今は無理だ。だって今のお前は【氷の女神の加護を受けし少女】であって、周りの子とは存在する価値が違う。それが俺の妹と言うのは……とても苦痛だ」
 
その言葉に涙が流れた。

お兄様にとても辛い表情をさせてしまっているのが、自分という存在なんだと思ったら、私は自分の存在が怖くなった。 
 
私は大好きだったお兄様の人生を滅茶苦茶にしてしまった。

私がサファイアなんかに選ばれていなかったら、お兄様は今でも人のためになる研究をしていたのかもしれない。
 
黒の魔法教団なんて言う組織が生まれる事もなくて、お兄様が闇魔法に手を出してしまう事だってなかったのかもしれない。
 
だから……こんな私がロキと肩を並べて、同じ位置に立てるはずがないんだ。
 
そう思った私は、お兄様が家を出ていった事をきっかけにロキと距離を取るようにした。

魔法学校を卒業するまで避けて避けて避け続けて、気がついた頃にはお互いに目を合わせて話す事すらなくなっていた。
 
学校の廊下ですれ違っても、街ですれ違う事があっても、決してお互いに目を合わせる事はなかった。
 
それから先生が旅に出るのを見送って二年が経った頃、私は魔法協会から【氷結の魔道士】として称号を受け取った。
 
その授与式に参加した時、そこにはロキの姿もあったのだ。彼の姿を目にした時、どうしてこいつがここに居るのかと思った。
 
そうしたら魔法協会の最高司祭である【ミカエル】が。

「ロキ君も今日の授与式で称号を受け取るんだ」
 
と言っているのが聞こえて、私はロキに目を送った。

するとロキは私の視線に気づくと、私の側まで歩いてきた。
 
久しぶりに彼の姿を真正面から見て、私は少し後退った。

しかしロキはそんな私の様子を気にすることなく、私の前に立つと突然満面の笑みを浮かべた。