「誰かと思ったら……ロキじゃない」
「カレン……」
ズボンのポケットからハンカチを取り出して、サファイアの刀身に付いた血を拭き取り鞘に戻す。
そして何もなかったように立ち上がってロキに背を向けた。
「もう動いて大丈夫なの?」
「お、俺はもう平気だ。……そんなことより、お前の方が心配だ」
「……へえ、あなたって人を心配する事が出来たのね」
そう言って私はまた壁を作ろうとする。
彼に弱音を吐いてしまっているところを見られて、内心では凄く焦っていた。
氷結の魔道士が弱音を吐いている、氷の女神の加護を受けし少女が子供みたいに泣いていた。
そんな姿だけは、誰にも見られなくなかった。
特にロキだけには……。
✩ ✩ ✩
ロキとは通っていた魔法学校が一緒で、最初はお互いにただのクラスメイトという関係だった。
用事がなければ特に話すこともなかったし、一緒に行動することすらなかった。
そんなロキと親しく話すようになったのは、私が氷の女神の加護を受けし少女と呼ばれるようになってからだった。
「なあなあ、カレン! お前って凄いな!」
「……えっ?」
教室で魔法書を呼んでいた時、突然隣から声を掛けられてそんな事を言われた。
驚いた私は紫色の目を瞬かせて、満面の笑みを浮かべているロキを見上げた。
「ろ、ロキ……くん? 一体何が凄いの?」
そう問い返したら彼は、青色の瞳をランランと輝かせて、ぐっと私に自分の顔を近づけてきた。
「だってさ! あの魔剣サファイアに認められたんだろ! それって凄いことなんだろ!」
「そ、そう、なのかな? でも、ごめんね。あまり実感が湧かないの」
三百年の間、誰も主を選ばなかったサファイアに主として選ばれて、氷の女神の加護を受けし少女なんて呼ばれるようになって、何もかもが突然過ぎてあの頃の私は状況について行けなかった。
「でも俺にとってお前は、凄いやつなんだよ」
そう言ってロキは、まるで自分ごとのように嬉しそうに笑顔を浮かべた。
そんな彼の姿に小首を傾げて、どうしてこの人はこんなに嬉しそうなんだろう? と思った。
「カレン……」
ズボンのポケットからハンカチを取り出して、サファイアの刀身に付いた血を拭き取り鞘に戻す。
そして何もなかったように立ち上がってロキに背を向けた。
「もう動いて大丈夫なの?」
「お、俺はもう平気だ。……そんなことより、お前の方が心配だ」
「……へえ、あなたって人を心配する事が出来たのね」
そう言って私はまた壁を作ろうとする。
彼に弱音を吐いてしまっているところを見られて、内心では凄く焦っていた。
氷結の魔道士が弱音を吐いている、氷の女神の加護を受けし少女が子供みたいに泣いていた。
そんな姿だけは、誰にも見られなくなかった。
特にロキだけには……。
✩ ✩ ✩
ロキとは通っていた魔法学校が一緒で、最初はお互いにただのクラスメイトという関係だった。
用事がなければ特に話すこともなかったし、一緒に行動することすらなかった。
そんなロキと親しく話すようになったのは、私が氷の女神の加護を受けし少女と呼ばれるようになってからだった。
「なあなあ、カレン! お前って凄いな!」
「……えっ?」
教室で魔法書を呼んでいた時、突然隣から声を掛けられてそんな事を言われた。
驚いた私は紫色の目を瞬かせて、満面の笑みを浮かべているロキを見上げた。
「ろ、ロキ……くん? 一体何が凄いの?」
そう問い返したら彼は、青色の瞳をランランと輝かせて、ぐっと私に自分の顔を近づけてきた。
「だってさ! あの魔剣サファイアに認められたんだろ! それって凄いことなんだろ!」
「そ、そう、なのかな? でも、ごめんね。あまり実感が湧かないの」
三百年の間、誰も主を選ばなかったサファイアに主として選ばれて、氷の女神の加護を受けし少女なんて呼ばれるようになって、何もかもが突然過ぎてあの頃の私は状況について行けなかった。
「でも俺にとってお前は、凄いやつなんだよ」
そう言ってロキは、まるで自分ごとのように嬉しそうに笑顔を浮かべた。
そんな彼の姿に小首を傾げて、どうしてこの人はこんなに嬉しそうなんだろう? と思った。



