ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

いや……精霊たちは生まれた時から暮らしていた土地を、そんな簡単に切り捨てる事ができる存在じゃない。

それにこの森には森人族たちも居る。
 
精霊と一番強い繋がりを持っていて、その力を最大限に発揮出来る彼女たちは、この森を捨てずに岬を守るために残っている。

だから精霊たちがこの地を捨てたと言う可能性はゼロに近い。
 
じゃあ、どうして精霊たちは姿を消したんだ? 

いったいなぜ……?

「っ!」
 
その時、俺の右目が嫌な魔力の反応を察知した。

ドクドクと脈打つように魔力が流れ込み、俺は咄嗟に右目を抑えた。

「……どうした?」
 
そんな俺を見たフォルは少し驚いた顔を見せる。

「……いや、何でもない」
 
とりあえず右目が落ち着くのを待ってから、右手を離し深く息を吐く。

この魔力の察知の仕方は久しぶりだった。

あの戦い以降、右目がこんなに強く反応を示すことはなかった。

……まさか。

「なあ、フォル。その流行りだした病気って言うのは、一体どんなものなんだ?」

「それは……なんて言えば良いのか……」

「は?」
 
えっ、言葉で説明するのが難しい病気って言うのか?

「その病気に掛かった者は、誰彼構わず俺たち狼人族や兎人族に襲い掛かるんだ」

「襲い掛かるだと?」
 
それも種族関係なく無差別に襲い掛かるっていうのか……?

それじゃあまるで、誰かに操られているような……。

「……なるほど」
 
その話を聞いて俺の中にある可能性が浮かび上がったが、それを断定するのは早いと思い、頭を左右に振った。

「お前たちが戦争をやっているのは、その病気によって狼人族は兎人族を、そして兎人族は狼人族の誰かを殺してしまった、って事がきっかけって事で良いんだな?」

「……ああ」
 
フォルは辛そうに表情を歪めると、部屋の中に飾ってある一枚の写真に目を送った。

その目に釣られて俺も視線を送ると、そこにはお腹を大きくしたスカーレットの姿があった。
 
そう言えば、スカーレットの姿が見られないが、何処かに行っているのか?

「なあ、フォル。スカーレットはどうした?」