「どうしてお前たち狼人族と兎人族は、縄張り争いなんていう名の戦争をしている? いや、なぜ戦争と偽ってお互いに戦っているんだ?」

「……っ」
 
その事に関してフォルは言いたくないのか、俺から目を逸した。それを見た俺は軽く息を吐く。

ほんと、昔からそういう癖は直っていないんだなと思い少々呆れた。

都合の悪い事を聞かれると、何も知らないとでも言うようにそっぽを向く。前もそうだったしな……。
 
しかしこれは、絶対にこいつから聞かなければならないことなんだ。
 
狼人族と兎人族が戦争をしているって言う話を俺が知ったのは、今から三日前の事になる。

✩ ✩ ✩

ちょっと用事があって、カレンが住んでいる街に立ち寄って昼食を取っている時に、その話を耳にしたんだ。

「まだ狼人族と兎人族は喧嘩してんのかぃ?」

「あんた、馬鹿だねぇ。喧嘩じゃなくて戦争だよ。あたしもどういう理由かは知らんけども、どうやら縄張り争いをしているって言うじゃないの?」
 
その話を聞いて俺は、飲んでいた紅茶のカップを落としそうになった。

「ふう……」
 
カップを落とさなくて良かったと一安心し、後ろの席に座っているご婦人たちの話に耳を傾ける。

「今から六十年くらい前かね、それからずっと戦争をしているようなのよぉ〜」

「そうだったのかぃ? そんなことちっとも知らなかったよぉ」
 
なんて言う話を耳にしながら、俺は前に訪れたそれぞれの種族の村の姿を思い出した。

「あいつらが……戦争?」
 
最初はそんなはずがないと思っていた。

だってあいつらは、お互いに交流のある種族だったし、それぞれ困った時は助け合って生きていた。

なのに、何があったと言うんだ?

「六十年も前か……」
 
そうなると、あのクソガキはもう長になっているか。

確か幼馴染だった【スカーレット】と結婚するんだ! って言い張っていたな。