サファイアと別れた俺は、前にも来た事がある遺跡へと立ち寄った。

この遺跡は白竜エーデルが居たという事もあって、この島ラスールでは一番安全な場所と言える。
 
しかしこの島を守っていたはずのエーデルは、どうやら一ヶ月前に姿を消したようだ。

それは一体なぜなのか。
 
その事について探るため、そしてエーデルと交わした約束を果たすため、今日俺はここにやって来たんだ。

彼女たちがこの島に来ている事に関しては、少し想定外だったけどな。
 
真夜中の森の中で兎人族に襲われていたあいつらを見つけて、助けてやろうかなとふと思ったけど、彼女の周りには素敵な騎士が三人いたし、俺の居場所をカレンに見つかるわけにもいかなかった。
 
だから彼らの様子を伺っていたベルに声を掛け、彼女たちを六月の岬へ連れて行くように促した。

ベルたち森人族と俺はある約束をしているから、ベルは俺の言うことには絶対に逆らえない。

まあ、それを悪用する気はまったくないんだけどな。

彼女たちには今後、ある事で役に立ってもらうつもりだし。

「さて、とりあえずフォルとライガーから聞いた話をまとめるか」
 
遺跡の中へと足を踏み入れた俺は、さっきフォルたちから聞いた話を思い出した。

✩ ✩ ✩

「よぉ、久しぶりだな」
 
時間はとっくに真夜中を回っていた。

そんな中、アポなしで突然押しかけてきた俺の姿を見たフォルは、心から嫌な顔を浮かべて俺を見ていた。
 
その顔を見て少しショックを受けながらも、俺はフードをとって近くにあった椅子に座った。
 
部屋の中にはフォルしかおらず、俺たち以外に気配は特に感じられない。これなら詳しく話を聞けそうだな。

「突然、何のようだ? お前が自らこの地にくるなんて、何年ぶりだ?」

「あ〜……いや、それは忘れたわ。でも俺が一度ここに来た時は、お前はまだクソ生意気なガキだったよな」

「……」
 
フォルは更に嫌な顔を浮かべると左へと視線を逸した。その姿に内心ニヤつきながらも、俺は直ぐに真剣な表情を浮かべた。

「今日は何も昔話をしに来たんじゃないんだ」
 
俺の言葉にフォルは既に何を聞かれるのか分かっているようで、深紅の瞳を細めてじっと俺の様子を伺った。

「率直に聞くぞ」
 
俺は左目を細めて問いかけた。