「いずれお前も戦うことになるんだ。そうだろう?」
 
私の言葉に彼は真剣な表情浮かべる。そして辛そうに左目を細めた。
 
いったいここに来るまで、この男はどれだけの旅をして来たのだろうか? 

一緒に過ごした期間はあった。

しかしそれは、あの戦いを終わらせる前までだ。その後この男がどうなっていたのかは、私自身も知らないことだ。

「お前ならやり遂げる事が出来ると信じているぞ」
 
そう、この男の願いは私にとっても大切な物だ。そのために私は、あの時力を貸したのだから。

「ありがとな、サファイア。だが、一つ気になる事があるんだ」

「気になること?」

彼は左目を細めると空を仰いだ。

「微かだがこの島から闇の魔力を感じた。いや、ここだけじゃない。俺が旅をしていた間に、ここ以外にも別のところから、強力な闇の魔力を感じたんだ」

「闇の魔力だと?!」
 
この島から闇の魔力を感じるだと?! しかもここ以外の場所からも……。

まさかあっちの世界からこちらの世界へと、闇の魔力が流れ込んできていると言うか? 

しかし今の私だけでは、この件について詳しく調べるわけにはいかない。

カレンは未だに……私の力を扱えないのだから。

「もしかしたら俺たちの知らないところで、何かが動きだそうとしているのかもしれない。一応、カレンには注意するように言っておいてくれ」

「……分かった。お前はこれからどうするんだ?」
 
私の質問に彼はフードを被り直すと、後ろに見える遺跡を見上げた。

「とりあえず、己の使命を全うするよ」
 
そう言って彼がマントを翻した時、腰にある二本の剣が太陽の光によって照らされた。

遺跡へと歩いて行くその後ろ姿を見届けた私は、目を閉じてその場から姿を消した。