ヴェルト・マギーア ソフィアと竜の島

青髪の女性は再び無造作に右手を動かすと、今度は無数の氷の矢を魔人ソフィアは背後へと出現させる。

「なっ!」
 
青髪の女性はそのまま右拳を作ると、全ての氷の矢を魔人ソフィアへと降り注がらせた。

「きゃあああ!」 
 
青髪の女性は決して、魔人ソフィアの反撃を許すこと無く魔法を連発していく。その光景に俺は呆気にとられた。
 
あの魔人化したソフィアに、反撃の隙きを与えない戦い方。

そして……何て高い魔力なんだ。

こんな魔力……今まで感じた事がない。
 
いったい、あの人は……。
 
魔人ソフィアの体は彼女の魔法によってボロボロにされ、今の彼女はもう立っているのがやっとに見えた。
 
青髪の女性は氷剣の切先を、魔人ソフィアへと向ける。その光景を目にした俺は目を見張った。

「本当にお前は、魔人族なのか?」
 
その言葉に魔人ソフィアは反応し怒りで体を震わせると、紅い瞳を細めてギロリと青髪の女性を睨みつけた。

「私が知っているあいつは、お前とは違っていた。自分の守るべき者の為に力を振るい、決して人を傷つけるような戦いはしなかったぞ」

「……いったい、誰の事を言っているのか知らないけど! 何も知らないお前が、私の何が分かるって言うのよ!」

「……いや、何も知らないな」
 
その言葉を最後に彼女は、氷剣を使って魔人ソフィアの体を貫いた。

「なっ!!」
 
その姿に俺の心臓が大きく跳ねた。

「……今のあんたじゃ、知ろうとは思えない」

魔人ソフィアは少し遅れて、自分の体が氷剣によって貫かれていると知る。

するとそのまま眠るように意識を手放し、ぐったりと体を項垂れた。

その拍子に彼女の髪が元の翡翠色に戻った事を確認した彼女は、ソフィアの体から氷剣を抜き、今度は左手をかざした。