「依頼の内容を詳しくお話しますので、三日後に六月の岬(イウニオスケープ)にてお待ち下さい」
 
最後の文面を俺の代わりに読み上げたテトは、肩から下りると今度はソフィアがよく使っている机の上に飛び乗る。

「六月の岬と言えば、真夜中の森(ミッターナハトヴァルト)の先にある岬だったかしら」

「ああ。でも確かあそこは東西南北で三種族の縄張りがあったよな」
 
俺はソフィアの机の引き出しから地図を取り出し、二人に広げて見せる。

「俺たちが住んでいる街がここで、真夜中の森はここから離れたこの位置にある」

「丁度隣町三つ分ってところね」

「となると、二日目の夜にはここを出ないとな」
 
ムニンの言葉に頷いたテトは、肉球を使って地図のある場所に印を付けていく。

「六月の岬に一番近いここには、森人族(ダークエルフ)の縄張り、そして東のこの場所は兎人族(ハーゼ)、西のこの場所は狼人族(ヴォルフ)の縄張りよ」
 
テトの言葉に目を瞬かせた俺は言う。

「よくそんなこと知っているな。俺でも三種族の縄張りがある事しか知らなかったのに、的確に各種族の縄張りを言えるなんて」
 
しかもそれを自分の肉球を使って地図に残した。

後でソフィアに怒られないと良いけど……。

「これくらい知っていないと、ソフィアの使い魔になんてなれないわよ」
 
その言葉を聞くのは一体何回目だろうか? 毎回の如く言っているけど、それはもうテトの口癖だと思って良いのだろうか?
 
でもテトの知識は本当に助かる。

前だってソフィアを助けるために知恵を貸してくれたんだ。

ある意味【ソフィアの使い魔になるには、これくらい知っておかないと】って言う言葉は、侮れないのかもしれないな。

「それに噂で聞いた話なんだけど、もう何十年も前からこの三種族で真夜中の森を巡って、縄張り争いをしているそうよ」

「うわぁ……まじかよ」
 
エアに与えられた領土では満足いかず、真夜中の森を巡って縄張り争いをしているのだろうか? 巻き込まれたら厄介なことになりそうだ。