聞きたい事は沢山あるのに、2人の間に出ていく勇気が持てない。


朝の冷たい空気に体が冷えてきているのに、動くこともできなかった。


「夏は生前よく言ってたんだ。『人の気持ちは刻一刻と変わっていくものだ。それなのに俺はサユが好きだって気持ちが変わらない。これってすごい事だと思うんだ』って。『だから、誕生日が来る前に絶対にこの気持ちを伝えんだ』って……」


夏の名前が出て来た瞬間、あたしは大きく息を飲んでいた。


どうして友太さんが夏の事を知っているの――!?


あたしは今まで一度だって夏のことを話したことはなかった。


友太さんが聞いて来なかったから、無理して説明する必要はないと思い、距離を保っていた。


それなのに……。


あたしの息を飲む音が聞こえたのか、サオお姉ちゃんが振り向いた。


逃げる暇なんてなかった。


あたしと視線がぶつかったサオお姉ちゃんは大きく目を見開いた。


「な……んで……?」


何も言うつもりはなかったのに、自然と口がそう動いていた。


「サユ、これは……」


「え? サユちゃん?」


サオお姉ちゃんの言葉に友太さんが驚いたようにこちらを見上げてきた。