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1人で電車に揺られていると、外の景色は徐々に田舎になっていく。


何度こうして電車に乗って『過去ポスト』へ向かっただろう。


あたしと夏の、唯一の接点である『過去ポスト』。


これがなければあたしはもう一度夏を繋がる事はできなかったに違いない。


もう見慣れた無人駅で下車し、そこから15分歩く。


この道のりだって最初は心細かったけれど今ではなれた物だった。


『過去ポスト』が見えて来た頃には息がはずみ、体温は上昇している。


今日も同じように歩いて来た……はずだったのに。


「なんで……?」


そこに『過去ポスト』はなかったのだ。


あたしは慌てて周囲を見回した。


どこかで道を間違えたのかもしれないと思い、引き返したりもした。


だけど、どれだけ探しても『過去ポスト』はないのだ。


「なんで? なんでないの?」


焦って視線が定まらない。


見渡す限り田んぼの田舎で、ポストが見つけられないなんてあるはずない。


『過去ポスト』は移動しているんじゃないか?


不意に、友太さんのそんな言葉が蘇って来た。


「嘘でしょう……?」


あたしは『過去ポスト』が立っていた場所に立ちつくしてそう呟いた。


『過去ポスト』は神出鬼没だ。


いつ、どこに現れるかわからない。


ずっと同じ場所になるとは限らない。