あたしは今でも時々感じる事がある。


あのお調子者で明るい夏が死んだなんて嘘なんじゃないかって。


実はみんなであたしを騙していて、夏は旅行にでも出かけているんじゃないかって。


だって、夏ってそういう人だった。


良く言えば自分の気持ちを大切にする人。


悪く言えば集団行動より自分がやりたいことを優先させてしまう人。


あの日だってそうだった。


海へ行こうと前日から誘われていたけれど、あたしは何度も断ったんだ。


なにせ大雨が降っていたし、海へ出るのはとても危険そうだったから。


それなのに夏は譲らなかった。


『今日じゃないとダメなんだ。頼むよサユ、海に付き合ってくれ』


そう懇願され、渋々夏と2人で海へ向かったんだ。


「人の言う事聞かないからだよ」


あたしはベッドから起きだして小さな声でそう呟いた。


結果的に、夏は帰らぬ人となってしまった。


夏の遺体は翌日の朝引きあげられ、あたしはその間ずっと砂浜で夏が戻って来るのを待ち続けていたのだ。