こんがりと焼けた肌に長身の夏は女子からとても人気がある。


そんな夏があたしを誘ってここに来たときは何かがあると直感していたっけ。


「サユ。波に乗る俺を見てて。戻ってきたら、伝えたいことがあるんだ」


夏はサーフボードを脇に抱えてそう言い、ほほ笑んだ。


「夏、だけど今日の波は少し高いよ?」


「このくらいなら平気だよ。夏休み中に目一杯練習したんだから」


夏はそう言い、波を見つめた。


そう言えば夏がサーフィンを始めたのは今年の夏休みからだって言ってたっけ。


高校に入学して最初の夏休み、なにか新しい事を始めたいと思った夏は中古でサーフィンに必要な道具をそろえたのだ。


「でもさぁ……」


「心配するなって。それより、1人で勝手に帰ったりすんなよ?」


そう言い、夏はあたしの頭をポンッと撫でると海へ向かった。


その後ろ姿にあたしの心臓はドクンッと大きく跳ねた。


あたしはこの後夏がどうなってしまうのか知っている。


まだ薄暗い海の中、何の躊躇もなく進んでいく夏に手を伸ばした。


しかし、その手は届かない。


それを知っていても尚、手を伸ばさずにはいられなかった。