あたしの足を撫でるように触れたそれを振り払うため、あたしは足をばたつかせた。


瞬間、海の中の海藻が足に絡み付いて来た。


うまく振りほどく事ができない。


一旦沈んで足に絡まった海藻を解こう。


頭ではそう考えるのに、冷たい海水のせいで体は思うように動かなかった。


ジタバタともがくようにして動いていたため、どんどん沖へと移動してしまう。


焦りに呼吸が乱れた、その瞬間。


「大丈夫か?」


そんな声がして、あたしの腕が掴まれたのだ。


ハッとして顔を向けるとそこには見知らぬ男性がいた。


肩まで海水につかった状態であたしを見ている。


一瞬夏の声かと思ったあたしは男性を見つめる事しかできなかったのだった。