気が付けばあたしは波打ち際に立っていた。


外はまだ薄暗く、太陽は登り切っていない。


昨日大雨が降ったため波はいつもより荒々しさを感じた。


足元に波が押し寄せて来てあたしは少し後ずさる。


朝の冷たい海水が心地よい。


空気まで澄んでいるように感じて大きく深呼吸をした。


潮の香と波の音しか聞こえて来ない、とても静かな時間だった。


「サユ」


突如名前を呼ばれて振り向いた。


そこに立っていたのはサーフィン姿の前田夏だった。


その姿を見た瞬間、あたしは声にならない声で大きなため息を吐いていた。


あぁ、これは夢だ。


夢の中でこれは夢だと気がつくのは何度目かの出来事だった。


しかも、同じ夢の中で気が付くのだ。


あたしは自分の胸がギュッと締め付けられるのを感じながら夏を見た。