桜舞い散るとき、キミは涙する


『簡単なものじゃない』


その言葉に、私も思い当たる節(ふし)があった。


お母さん……


お父さんと死に別れた私のお母さんは、20年近く経った今でも独身を貫いている。


話の端々(はしばし)から伝わってくる、今でも色あせないお父さんへの深い愛。

私は幼い頃からずっとそれを目(ま)の当たりにし、感じてきた。


「それに、真咲さんも薄々気付いてると思うけど……」


眉間にしわを寄せ、清水君の表情がより一層険しくなる。


「なにより真咲さんは、美桜ちゃんと顔がそっくりだから……。どうしてもだめなんだ」

「そっくり……」


指先が、震える。

驚きと共に、あぁやっぱり……という思いが胸の奥で交錯した。


「そんなに……似てるんですか?私と美桜さん」

「そうだね。会話すると全然別人だけど。顔だけは正直似すぎてて、俺じゃ判別できるか自信ない」


申し訳なさそうに俯(うつむ)く清水君。


本当は、心のどこかで自分でもわかってた。

美桜さんと似てるんじゃないかって。


何度も美桜さんに間違われるたび、そんなの単なる偶然だって……、無理矢理そう思い込もうとしていた。