桜舞い散るとき、キミは涙する


「これから聞くことは、大和の前では知らないふりをすること。
それと、俺から聞いたってことは秘密にすること」


結局私の熱意に根負けした清水君は、2つの条件付きで話すことを承諾してくれた。


自分が望んだこととはいえ、今からつきつけられるであろう更に辛い現実に、胃がキリキリと痛みだす。


頑張れ、実紅!


それでも自分で自分を懸命に励まし、清水君の言葉を待った。


「ミオちゃんは、俺や大和が通う秀明館の同級生だったんだ。
中等部から一緒で、俺達が入ってたバスケ部のマネージャーだった。
ミオちゃんてさ、『美しい桜』って書いてミオっていうんだけど。
本当に桜の精みたいにすごくキレイで……。
みんなの憧れだったんだ」


そう言って懐かしそうに目を細め、窓の外を遠く見つめる。


もしかすると清水君も、美桜さんに憧れていたのかもしれない。


「美桜ちゃんと大和は中1の頃から仲が良くて。
気が付いたら、当然のように恋人同士になってた」


──『恋人同士』


その言葉に、頭をガツンと殴られたような強い衝撃が走る。