どうしよう……。やっぱり出直して来ようかな。

それとも何か別の作戦を立てたほうが……。


パニックになりかけている頭を抱え、必死に考えを巡らす。

しかしそんな簡単にポンコツ頭の私に名案が浮かぶはずもなく……。


そのまま何十回目かのどうしようを頭の中で呟いた時


「あっ!」


見覚えのある生徒の顔が、視界の隅に飛び込んで来た。


しかも周囲に友達らしき生徒はおらず、幸運にも1人で下校しているではないか。


これってば、絶好のチャンス!


先程までの迷いが一気に吹き飛ぶ。

気が付くと私はその人物に向かって駆け出していた。


「あのっ……すみません」

「え……?」


突然目の前に現れたマスク女に、明らかに相手の瞳に警戒の色が浮かんでいる。


「君……誰?」


不信感むき出しの視線と声音。


う……。


怯む(ひるむ)体にどうにか力をこめ、私は大きなマスクに手をかけた。


「私のこと、覚えてませんか?」


マスクをはずした私の顔を見て、相手の目があの日と同じように大きく見開かれる。


「大和と……一緒にいた子?」

「はい」


コクリと頷くと、相手……清水君の表情が、見るまに警戒から困惑へと変わったのだった。