桜舞い散るとき、キミは涙する


「真咲さんは、この世界から消えたいと思ったことないの?」

「え……?」


感情が全く感じられない、無機質な声音。

驚いて隣の保志君を見上げると、酷く悲しい目をした彼と、視線が交わった。


この目……知ってる。

確か私が、保志君と初めて会った時に見た目と一緒だ。


希望の光が見い出せない、一面絶望に染まった瞳。


あ……。


すぐに私から視線を外し、一瞬寂しそうに目を伏せる。

そして私の返答を待つことなく、店の出入り口へと歩き出した。



なぜ、そんなこと聞くの?

なぜ、そんな悲しい目をするの?

保志君は、この世界から消えたいと思ってるの?


聞きたいけれど、保志君はきっと答えてはくれないだろう。

彼が抱えているのは、それほどに、深い闇なんだと思う。


それなのに、何もしてあげられない自分が本当に情けなくて……。


苦しくて、胸が痛い。


痛くて痛くて……どうしたらいいかわからないよ……。


結局私は、前を歩く保志君の背中に、話しかけることすらできなかった。