桜舞い散るとき、キミは涙する


「…………」



長い長い沈黙。


あれ?何かまずいこと聞いた?

それとも、質問に質問で返したのが気に障ったとか?



待てど暮らせど返って来ない返答に、不安がつのっていく。


更に待つこと数十秒。



「……医者」


街中の喧騒にかき消されてしまいそうなほど小さな声が、ようやく私の耳に届いた。



「わ、私も!私も実は医療系なの!看護師になりたくて」


そんなの真っ赤なウソ。


保志君に少しでも近付きたい。


そう思ったら、勝手に口から出ていたのだ。



「そっか……」


期待とは裏腹に、返ってきたのは薄い反応。


表情も、どこか浮かない。


その後本屋に着くまで、彼が再び言葉を発することはもうなかった。