桜舞い散るとき、キミは涙する


* * * * * *


「ヤバ!メッチャ私の好みなんだけど~」

「誰か待ってるのかなぁ?まさか彼女とか!?」

「ね~ね~、声掛けてみようよ」


うわっ。すっごい人だかり……。



正門からちょっと距離を取るようにして、数十人の女の子達が色めき立っている。

その姿はまるで、アイドルの出待ちをしているファンのようだ。



「ほらほら!うちらも早く顔を拝んでこよ~よ」

「え!?あ、ちょっと佳奈ってば」


「やめようよ」という制止の声も聞かず、私の腕を掴んだまま佳奈が足早に歩き出す。


そのまま大胆にも男子生徒の横をすり抜けると、顔が見えるよう正面に回り込んだ。


これってば、すっごく失礼なんじゃ……。


「ごめんなさいごめんなさい」と、何度も心の中で男の子に謝りながら、通り過ぎるふうを装いチラリと横目に顔を見る。



「っ!!」


ドクン!



その瞬間、心臓を鷲づかみにされたような衝撃が全身を駆け抜け、私の思考回路が完全に停止した。