無理もない。
ただでさえうちの学校は女子高だから、そもそも男の子との出会いがほとんど無い。
しかもその男の子が『秀明館』なら尚のこと。
『秀明館』とは、うちの学校から車で15分程離れた、県内でも有名な私立の進学校。
それに加え中高一貫教育で、裕福な家庭の子が通う、いわゆる『お坊ちゃま・お嬢様学校』としても有名なのだ。
秀明館かぁ。私とは別世界の人間だよなぁ……。
うちみたいな成績も平凡で何の特徴もない県立の女子高からしてみれば、秀明館は、まさに高嶺の花的存在。
ましてや私みたいな貧乏勤労学生には、どう転んでも縁がない人達だ。
私が一人冷めたことを考えている中
「ねねっ、秀明館だって!私達も見に行こうよ!」
キラキラと目を輝かせた佳奈が、興奮気味に肩をゆすってくる。
「私はいいよ。興味ないし」
「え~!?イケメンだよ?イ・ケ・メ・ン!すっごく気になるじゃんっ」
「佳奈、ちゃんと彼氏いるでしょ?」
こう見えても佳奈は彼氏持ち。
同じ中学の同級生で、中3の時からずっと付き合っている。
もちろん相手は、私もよく知っている男の子だ。
「それとこれとは別だからいいの!」
ワケのわからない理屈をこね、佳奈が嫌がる私の腕を無理矢理引っ張る。
「え~!?ホントに見に行くの!?」
「もっちろん」
こういう時の佳奈は無敵状態。
最早、誰にも止められない。
そんな佳奈に引きずられるようにして、結局私も野次馬の仲間入りをすることになってしまった。

