桜舞い散るとき、キミは涙する


「その…… これからは保志君のこと、大和君て呼んでもいいかな……?」


もちろんこれも、佳奈から受けたアドバイスのひとつ。

いち早く相手との距離を縮めるには、名字より下の名前で呼ぶほうが断然いいんだって。


「……あぁ。かまわないよ」

「ホント!?」


意外にもあっさりOKしてくれたことがすごく嬉しくて、立て続けにお願いが口をついて出る。


「じゃあじゃあ、私のことも『真咲さん』じゃなくて『実紅』って呼んでくれる!?」

「……っ!! それは……」


あ……。


困ったように眉根を寄せ、言いよどむ保志君。

途端に重苦しい空気が、2人の間を流れる。


私のバカバカ!

せっかくいい雰囲気だったのに、つい調子に乗るから、保志君……じゃない、大和君が困ってるじゃない!


今更後悔したところで、言ってしまった言葉は取り消せない。


とにかく大和君に嫌われたくなくて、私はわざとおどけた風を装い、言葉を続けた。