桜舞い散るとき、キミは涙する


* * * * * *


どこに行くのかな?


行き先を告げられぬまま、保志君のあとについて電車で移動すること30分。

現在更にそこから、徒歩で目的地へ向かっている真っ最中である。


初めてこの町で下車したけど……。

近くにテーマパークとか、大きなお店とかあったっけ?


見渡す限り、一般的な家屋や自然豊かな風景ばかり。

閑静な住宅街といった感じで、お世辞にも、デートに向いている場所とは思えない。


それでもこうして、保志君の『彼女』として並んで歩けることが夢みたいで。


嬉しさでずっと緩みっぱなしの頬を、保志君にバレないよう両手で覆い隠した。


「? どうかした?」

「え?」


そんな私の仕草を不思議に思ったのか、保志君が首を傾げながら話しかけてくる。


やばっ! 変なヤツって思われた!?


「ううん! なんでもないよ、なんでも!」

「そう」


慌てて笑顔を取り繕い、平静を装う。


あ、危なかった……。


せっかく今日は保志君に褒められたんだから、出来ればそのイメージを壊したくない。


本来の落ち着きの無さがこれ以上露呈するのを避けるため、私は「あのね」と早々に話を切りかえた。