桜舞い散るとき、キミは涙する


「お待たせ、しました」


ドキドキしながら、保志君に声をかける。

緊張とはまた別に、なんとなく照れてしまうのは、恋人同士になってから初めて会うせいかもしれない。


私の声に気付き、顔を上げる保志君。

次の瞬間、彼の瞳が大きく見開かれた。


あれ?


驚きに満ちた表情で私を見つめ、すっかり固まってしまっている。


あれ? あれ? あれれ?


「や、やっぱりこの服、私には似合ってないよねっ。ごめんね、なんか……っ」


保志君の反応を見て猛烈に恥ずかしくなり、おもわず俯(うつむ)く私。


やっぱりやっぱりやっぱり、もっと無難で地味な服にしとけばよかった!

清楚なんて、がらじゃないのに……っ。

保志君、絶対引いてるよね。


「なんなら、今から着がえてきても……。それかどこかのお店で服買うとか……!」


とにかく恥ずかしくて悲しくて。


真っ赤になりながら、矢継ぎ早にまくしたてる。


「いや……。そんなことないよ」

「へ……?」


そんな私の耳の届いたのは、まさかの否定の言葉。


聞き間違いじゃなかろうかと、慌てて顔を上げると


「とっても似合ってるよ」


保志君の温かくて優しい声と眼差しが、まっすぐ私に降り注いだ。