一日限りの記憶の中で、君を愛そう

「そう。よかった」

にこりと笑ったカザミに、顔が赤くなりかけたけれど、すぐに頭を振った。

誰かを大切に思ったって、意味ないもん。

意味……ないもん。

きっと記憶の少年みたいに忘れちゃう。

この人はいい人。カザミはいい人。

そうやって思う私がいるけど、どうせ明日には別の私になってる。

だから……

「カザミ」

「なに?」

「私に声をかけないで」

カザミは一瞬怪訝そうに、そして傷ついたように顔を歪めたけれどまた微笑んで言った。

「わかった。声をかけなきゃいいんだね」

「う……ん」

それがあまりにあっさりしていたので、私は肯定の返事も尻すぼみになってしまう。

なんでこんなこと、言っちゃったんだろう。

自分の馬鹿さに頭が痛くなった。


ツキン
    ツキン
ツキン
    ツキン
                 ツキ……ン

『いつまでも傍にいるから』

「だけど傍にいることくらいは、許してくれるかな」

記憶の少年とカザミが重なる。