プロポーズは金曜日に

「はい。ありがとうございます」

「ふふ、うん」


嬉しそうに口元を緩めくれた伊波くんに、心が浮く。


「プロポーズ記念日」と書いたそれを、伊波くんは長い指で何度もなぞって、呟いた。


「……ありがとう、ございます」

「うん」

「……麻里?」

「うん?」


そうっと私の名前を呼んだ伊波くんに手招きされて、ソファーに近づく。


伊波くんの隣を手で示されたので、そこに座ろうとした途端、腰を攫われて伊波くんに倒れ込んだ。


ぎゅうう、と後ろから抱き締められる。


伊波くんの顔が見たくて振り返ろうとしてみたけど、伊波くんは私の肩に顔を埋めているから、息がかかってくすぐったいだけで、全然見えない。


そうっと左後ろを見遣って。

やっぱり見えなくて。


髪が重なって音を立てるのを聞きながら、正面を向く。


「麻里」

「うん」

「麻里、麻里」

「なあに、伊波くん。呼んでみただけ?」

「いいえ」


そうじゃなくて。


「麻里、好きですよ」


へにゃ、と伊波くんが笑うから。


好きだよ、と私も笑った。




Fin.