プロポーズは金曜日に

「逃げて、すみません」


そんなことない、と。気にしていない、と言いたくて。

言いたいのに、喉が嗄れて息が苦しくて、荒い呼吸に肩が上下する。


上手く言えない代わりに首を横に振ると、私の背中に回った腕に力が込もった。


「格好悪いけど、もう一回言ってもいいですか」

「…………もういっかい」


ちょっと何を言われたのか理解できない。


音の響きをそのまま繰り返すと、何だかとても幼い音になった。


思わず首を傾げる。


もう一回?

……え?


ぽかんと間抜けに惚けた私に、伊波くんは弱り切ったように眉をハの字にした。


「……お願いします。麻里が、好きなんです」


だから、ちゃんと言わせてください、と懇願される。


強張る顔を押し下げて頷いた私に、口元が少し不恰好に弧を描く。


「僕は、その……」


伊波くんが、困ったように笑った。