プロポーズは金曜日に

「伊波くんの言葉じゃなきゃ、やだよ」

「っ」


結婚したくないわけじゃない。

結婚したくない、わけがない。


「わ、たし、伊波くんと結婚したいよ……!」


泣き顔で吼えた私に、伊波くんが大きく息を飲んだ。


多分、初めて私から明確に、結婚したいと言ったからだ。


今までは、もし私が結婚したいと言ったら、もうそれがその時点で逆プロポーズになってしまう気がして、何も言えなかったから。


ねえ、伊波くん。


「伊波くんがいいんだよ……!」


もどかしく言い募る。


「伊波くんしかいないんだよ……!」


言い募る。


「伊波くんに言われたいんだよ……!」


言い募る。


荒い呼吸で無理矢理声を出すごとに、伊波くんの顔がくしゃり、くしゃりと、泣きそうに歪んだ。


「私はっ、わたし、は、」


喉が詰まる。


もう自分が何を言いたいのかも分からなくなってきて、それでも何か言いたくて、……伊波くんが好きなんだよと言おうとして、しゃくり上げたら。


静かな部屋に、ごめんなさい、と嗄れたささやきが落ちた。


「ごめんなさい、麻里」


強く抱き締められて、伊波くんの胸が私の視界を塞ぐ。


「麻里」

「……うん」


麻里。

麻里。


何度も柔らかい声が降る。


何度も優しく私を呼ぶ。


「……麻里」