はっきり笑って初めてタレ目だと分かる、普通に微笑んでいると分からないくらい、緩やかなタレ目。

とても優しげな、ひどく美しい顔立ち。

口元には、小さな笑いジワ。


伊波くんは私と会っている間中、ずっと微笑んでいたから、それでこれは笑いジワだ、と分かると同時に、笑いジワがつくくらい、いつもにこにこしている人に会ったのは初めてで。


……何というか、感慨というか、感傷というか、じわりと尊敬が心内に滲んだのを覚えている。

私はそんなによく微笑む方じゃなかったから、なおさら。


対面でも会話はゆっくりで、少しずつ少しずつ、緩やかに話をした。



その日の終わり、最寄り駅まで送ってもらった後の帰宅途中。


終始穏やかだった伊波くんの微笑みを、そうっと思い出した。


見上げる度に見えた小さな笑いジワを、何度も何度も思い出した。


家に着いて玄関の扉を開けて、……ああ大丈夫だ、と何気なく確信した。


きっと、お互いに理解しようと試行錯誤できる。きっとお互いを大切にできる。きっと、きっと、伊波くんとなら、大丈夫。


また会って話したいなあ、と思った。