伊波くんとは、友達の紹介で出会った。


いい人いないかな、とぼんやり呟いたら、いい人いるよ、と言われて、話してみたくなって。


『多分好きな感じかな。優しくて論理的で穏やかなんだよ。好きでしょ?』

『なんだって……! すき!!』

『しかもイケメン』

『なんだって……!?』


私がよく思い描く理想の結婚相手は、優しくて論理的で穏やかな人だ。


優しいのはまず大事。


次に、話がしやすいだろうし、多分私と似た考え方をするから、論理的なのも大事。


穏やかだともっと素敵。イケメンだなんて素敵すぎるくらい。


写真見る? と言われたけど、そうしたら、顔で選んだ罪悪感みたいなもやもやしたものが勝手に芽生えそうだったから、やめておいた。


『いなみって言うんだけど』

『いなみ?』

『うん。いなみ』

『いなみってどう書くの? 井波?』


井波、と紙に書いたら。


『惜しい。違うよ。ペン貸して』


伊波、と。彼女の角ばった四角い文字が、私の丸い字の隣に並んだ。


友達にお願いして、私にアドレスを教えてもいいか伊波さんに確認してもらい、了承を得て。


送られてきたそのアドレスに、何度も推敲して何度も打ち直して、ほとんど半日かけた割にはあっさりしたメールを昼頃送った。


はじめまして。突然すみません——そんな不恰好な名乗りから、やり取りは始まったのだった。