プロポーズは金曜日に

ふわりと笑った伊波くんの目が少し充血している。


申し訳なさがまた込み上げてきて、もう一度頭を下げた。


「今日はほんとにありがとう。おかげでなんとかなりました」

「いいえ」

「お昼寝とかしてね。充血してるから」

「え、気づきませんでした」


きょとんと首を傾げつつ黒目をぐるぐる動かしたところ、違和感を感じたらしい。


しぱしぱ何度も瞬きをして、目元を覆うように両手を当てて気にしている。


「……後で少し寝ます」

「うん。休日だもん、ゆっくりしてね」


それじゃあ、と笑いかけた。


「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


伊波くんも笑う。


「眠くても寝ちゃ駄目ですよ」

「頑張る……」

「ふふ、じゃあ、気をつけて」


はーい、と玄関を出る。


笑みこぼれる幸せに、足取りが弾む。


一緒に起きて、ご飯を食べて、行ってきますと行ってらっしゃいを言う——これまでに何度もあった、日常にしたい朝だった。


結婚したいなあと、とりとめもないことを考えた。