プロポーズは金曜日に

「今度買って来とくよ。腐るものでもないしね。何がいい? いつものでいい?」

「苦めのが欲しいです」

「苦めのね、了解。ケーキとかお菓子とか食べる時期だもんね」


普段は酸っぱくなく苦くない豆を二人とも好むんだけど、冬場は甘いものを食べるイベントが多いからね。


甘いもののときは少しだけ苦味がある豆の方が、口がさっぱりして食べやすい。


いくつか試飲させてもらって、酸味がない、苦すぎない豆にしよう。


お互い好みは把握してある。


任せて、と意気込むと、お願いします、と微笑んだ伊波くんが、私越しに背面の壁時計を見て聞いた。


「あ、麻里、時間大丈夫ですか」


慌てて腕時計を確認する。


あ、結構やばい。まだ間に合うけどそろそろ出ないと。半の電車を逃すとしばらく間があいてしまう。


「うん、そろそろ行く」

「じゃあ、また後で連絡しますね」

「うん。なるべく早く帰ってくるね。連絡はお昼頃に一回見られると思う」

「焦らずに待ってます」

「うん」