プロポーズは金曜日に

コーヒーを淹れ、ご飯を食べ、いちごを二つ三つ摘み、ばたばたと準備をする。


アイラインを引いていたら、洗面所の扉がノックされた。


「麻里ー?」


扉越しの呼びかけがくぐもっている。


「はーい」

「今日帰ってきたら何食べたいですか?」

「おでん!」


今日は金曜日だから、元々伊波くんのお家に行く——この場合、帰ってくるが正しいのかな? ともかく、伊波くんの家にお泊まりする予定。


お家にずっといて時間があるということだと思うので、味が染みた方が美味しいおでんをリクエストしてみた。


おでんならずっと見てなくてもいいから、時間はかかるけど、労力的にはつらくない。


「でも一旦帰ってから帰ってくるから、ちょっと遅くなるかも」


干しっぱなしの洗濯物回収したいし、軽く掃除したいし、いくつか片付けておきたいことがある。


そっちが気になっちゃって、せっかく伊波くんのお家に来たのにのんびりできないのも嫌だし。


だから、帰ってから帰ってこよう。


思いついたおかしな言い方は、自分の部屋に帰って、伊波くんの部屋にも帰る、ということを言いたいだけなんだけど、帰ってから帰ると言うと少し面白い。


帰ってから、帰る。


帰る場所が二つあるなんて、とても甘美で素敵な響きだ。