プロポーズは金曜日に

「おはよう」

「おはようございます」


困り果ててひとまず挨拶してみたら、チン、と遠くでオーブンが鳴った。


伊波くんがオーブンを見るみたいに後ろを振り返る。


「あ、焼けたみたいですね、フランスパン」

「今日フランスパンなの? 嬉しい」

「フランスパンとふわとろのオムレツですよ」

「嬉しい!」


上機嫌な私に微笑んで、ベッドの縁から離れる。


「あとサラダですね。ドレッシングは和風と洋風どっちにしますか」

「和風にする」

「じゃあ僕も、今日は和風にします」


朝でも美しい伊波くんは、ふふふ、と笑って。


「早く来てくれないと朝ご飯冷めちゃいますよ、麻里」


そんなことを言いながら、軽やかな足取りで扉の向こうに消えた。


伊波くんの声が次第に遠くなるのを追いかけてそちらを見やると、開け放された向こう側から、美味しそうな匂いと音がする。


伊波くんがそばにいる朝はあんまり素敵で、優しい目眩がするようだった。