伊波くんが金曜日だけ変になってしまった心当たりは、実はある。


金曜日だけなのは、翌日が大抵休日だから負担が少ないと思ってのことだろう。


伊波くん、金曜日以外は頑張らないから。


……頑張って、いるのは。


私が、迂闊だったせいだろう。


伊波くんと二人でテレビを見ていたときに、たまたま映ったのが恋愛ドラマだった。


主役の俳優さんが結構好きな俳優さんで、

その俳優さんがハマリ役で照れてるのが素敵で、

ドラマはあんまり見ない方なのに、珍しくちゃんと見ている私に伊波くんが「麻里?」と不思議そうに首を傾げちゃったりして、

それに私はなんとはなしに「こういうのいいよね」なんて言っちゃったりして。


伊波くんはきょとんと瞠目していた。

伊波くんによくある可愛い仕草だった。


『そう、なんですか?』

『え、うん。いいと思うけど』


へえ〜、としぱしぱ瞬きをして感心してたから、なんでこうもこの人は可愛いんだろうかと考察するのに忙しかった私は、伊波くんが真剣に見始めたことにあまり気づいていなかった。


……視界の端に映る場面は、ちょうどクサイ台詞のラブシーンで。


つまりは、その。


私の言った「こういうの」と、伊波くんが受け取った「こういうの」には、大きな違いがあることに、私は気づいていなかったのだ。