プロポーズは金曜日に

……私はあんまり几帳面なタチじゃない。自分に甘い自覚もある。


だから、伊波くんの申し出はありがたかった。


人の目があればやらないわけにはいかない。


だって、明らかにやるって分かってて、やらないと駄目なことで、協力もしてもらってて、やりますって宣言もしてるのにやらなかったら、ちょっと駄目駄目すぎる。


……うん。

ものすごく恥ずかしいかな、それは。無理。恥ずかしい。


それに、自分には言い訳できても、伊波くんには言い訳できないし、したくない。


伊波くんは几帳面なタチで、自分に厳しいからね。


お仕事だと分かっていても眠くなる私とは大違いなんである。


伊波くんは何も言わないだろうけど、私が仕事をちゃんとこなさなかったら、きっと残念に思う。失望する。

……もしかしたら、ちょっぴり嫌われちゃうかもしれない。


伊波くんが付き合って起きててくれるのは、私がちゃんと仕事を終わらせると確信しているからだ。


だって、この申し出って、私の仕事が終わらないと伊波くんも寝られないんだよ。

伊波くんは宣言を翻すなんてことはしないので、確実に寝られない。


信じてくれる理由の前提に、私の社会人としての責任感がもちろんあるだろうけど、伊波くんならきっと。

伊波くんのことだから、きっと。


なんで起きててくれるのって聞いたら、「麻里だからです」って言うに違いないんだ。


私はちゃんと仕事をする。期限を守る。

私はそういう人で、そうありたいと思っていて、自分はそんなところを好きになったから、って。


きっと、きっと、ふわり、笑って答えるに違いないんだ。