「よかったらこっちでやりますか? 声がけくらいなら手伝えますよ」

「ほんと!? やったっ」


大抵の人がそうだと思うけど、私が資料を作るとき、EnterキーとCtrl+Sはほとんどセットだ。


一応もう一度上書き保存して、ちゃんと保存できてるか確認してから、ばたばたパソコンを片付ける。


伊波くんはこういうとき、忙しかったり、翌日朝早かったりする場合には何も提案しないで、終わって余裕ができたら甘いものでも食べましょうか、とだけ言う。


もしかしたら声がけが無理かもしれない場合は絶対に、手伝うか聞かない。

眠れるか分からない私の前で自分が寝たら、それはあんまりひどいから。


起きていられると思ってお邪魔するのに、つられて眠くなったら元も子もない。なんで家に呼んだのってなるし。


だから、誘ってくれたということは、伊波くんは最後まで起きていて、私の書類が片付くまで——つまりは、私が寝るまで付き合ってくれるということなのだった。


たとえばこれが、今日が金曜日で、翌日が土日でお休みなら、伊波くんは私を起こしてくれるし、私は伊波くんを起こすし、協力するのはお互いよくあることだ。


でも、今日は木曜日。


伊波くんは翌日にお仕事がある日は十一時に寝ると決めているから、普通は私を誘わない。


私もそのつもりで、だから「会いたかった、会えないの悲しいつらい。ごめんね」と電話をかけたんだけど。