「伊波くん、もうちょっと詰めていい?」

「はい」


ソファーに座る位置をお互い真ん中に寄せて、距離を詰めた。


肩が触れたところで伊波くんの左手をさらって、私の右手とつなぐ。


きゅう、と力を入れたら、同じ分だけ伊波くんも力を入れてくれた。


同じ力加減。

同じ気持ち。

同じ好きの量。


本当は同じがいいけど、同じじゃなくてもいいから。


できることなら、一緒に同じ幸せを夢見たい。


「伊波くん」

「はい」

「伊波くん、伊波くん」

「はい」

「何でもないよ。呼びたかっただけ」

「……ふふ、はい」


くすくすくす、二人で笑う。


手をつないだのは、もういいよ、気にしてないよ、という私なりの合図だ。


伊波くんはこういうとき、ちゃんと線引きを間違わない。


何かありますか、とは決して言わない。


ちゃんと機微を理解している伊波くんは、私のお願いを聞く代わりに、ふんわりへにゃり、私が大好きな笑顔で緩やかに笑った。


「麻里」


穏やかな呼び声。


「うん」

「麻里、麻里」

「うん。なに、呼びたかっただけ?」

「いいえ」


つないだ手に力がこもって揺れる。


肩と肩がくっついて、視線が合わさって、額が近づく。


一旦指先を離して、お互いを確かめるみたいにつなぎ直せば。


「麻里、好きですよ」

「うん」


穏やかに唇が重なった。