あんまり静かで少し不安になった私に、ゆっくり口を開く。


「僕も、そう思います」

「うん、そっか、よかった。だから伊波くんが好きだよ、私」


神妙に頷いた伊波くんに、ふふふ、と笑う。


別にね、考え方は違くていいの。


自分とまるきり同じ考え方だなんて、つまらないのかもしれない。


だけど、私の中で決まっている一線は越えないで欲しいし、方針は同じがいい。


一緒にいて喧嘩ばかりなんて、あんまり切ないから。


「すみません」


伊波くんはしょげた顔で瞬きをした。


瞬きは、伊波くんが考えごとをするときにたまに出るくせだ。


ゆっくり数回、焦りを落ち着かせるために瞬きをする。


表情と選んだ言葉から、今、大体何を考えたのか類推して、ふと思いついたそれの伊波くんらしい誠実さに、もう一度、ふふふ、と笑いがもれた。


恐らく伊波くんは今、充分謝ったかを考えたのだ。


もっと謝ってちゃんと許してもらおう、とか、どう謝ればいいか、とかではなくて、謝ろうという気持ち全ての分を、きちんと謝ったか。


それで伊波くんは、自分は全部の分をきちんと謝ったと判断したのだ。


謝ることを作業にしないで、意味と価値をくれる。気持ちを大事にしてくれる。


そういうところがいい。


……ねえ、私ね、だから好きだよ。