今回の役どころは、ヒロインが恋する男性に嫉妬するライバルの男性。


ヒロインのことをからかう、意地悪だけど本当は優しい面もいろいろある人の役だ。


しかも社長子息。イケメンでお金持ちでギャップあり——まあつまり、ただでさえずるいのに、彼が演じるともっと素敵でずるい役。


ニヒルな笑みとちょっと俺様っぽい口調がとても似合う。あと質のいいスーツね。


背が高いうえにちゃんと肩幅があるから、こなれた感じでスーツを着ている。


彼は今回、薄い唇を端から歪めるような歪な笑い方をしていて、そのときに若干目を細めてヒロインを見つめるのがたまらなく色っぽいのだ。


言葉使いはあまり丁寧じゃないけど、頻繁に投げられる視線とその先の人物が誰なのかを見れば理由は分かる。


瞳に込もる熱量とヒロインの扱いから透ける確かな好意に、多くの女性がときめいているらしい。それは私も例外ではなく。


「俺のモノになれよ」

「ふおおおあああ……!」


普通に喰らって悶えると、それを見ていた伊波くんがしばらく考え、はっとしてこちらを振り向いた。


……あ。


やばい、と思う間もなく、流し目を喰らう。


うおあ、待って待って待って……!


い、嫌な予感がする。


不安に固まる私の手を取って、麻里、と私を呼ぶ伊波くん。


その声はやっぱりいつもより数段低く、その顔はやっぱりいつもより堅く強張って、そのくせとても美しかった。