伊波くんはいまだに若干ぽかんとした表情を残したまま、ゆっくり瞬きをして、思い出すように少し視線をさまよわせながら、考え考え、言葉を選んで説明した。


「いえ、その、麻里に好きって言って欲しいなと思いまして。思ったので、言ったんですけど……」


好きって言って欲しいなー。あ、そうだ、言って欲しいって言えばいいのか。

というあっさりした思考だったんだろう。


唐突に思ったものだから、そのままよく考えずに言ったらこうなった、と。なるほど。


「でも、いつも言ってくれてますよね。そうでした」

「そうでしたって、何それ。変なの」


ふふふ、と笑う。


無意識のうちってこと、だよね。無意識のうちに、私に好きって言って欲しいと思ったんだよね。


その前提として、私のことを好きだと思ってくれてるって考えても、いいんだよね?


伊波くんはよく言ってくれるから、その前提条件を分かってはいるんだけど、伊波くんは私のことがちゃんと好きなんだと認識する度に、やっぱり嬉しい。


好きがいつも当然のように私たちを取り囲んでいるからなのか、あ、そうか、好きなのか。なんて、毎回新鮮に認識し直す。


分かっているんだけど、分かっていても、改めて認識するとくすぐったいのだ。


「私ね、伊波くんのこと、好きだよ」

「僕も、麻里のこと好きですよ」


何度でも好きだよと言い合いたい。

何度でもお互いの気持ちを確かめ合いたい。


何度でも好きだと思いたい。

何度でも、好きだと言われて喜びたい。


私は何度でも、伊波くんの微笑みに、恋をしたい。