プロポーズは金曜日に

いえ、と伊波くんは首を緩く横に振って、優しい落としどころをくれる。


「断ってくれているものが多いのは分かってます。……早く、帰ってきてくださいね」

「うん」


強く即答する。


もちろん、と言いたかったけど、それは少しずるい気がしたから、頷くだけにした。


飲み会の日は、私は大抵、伊波くんの部屋に転がり込む。


夜遅く、真っ暗に冷えた部屋に、ばたりと倒れ込むように明かりをつける寂しさが嫌で。

気疲れした夜は、伊波くんの優しさに触れたくて。


私は伊波くんが好きだということを、伊波くんがそばにいてくれているということを、無性に確認したくなる。


そういう日、どんなに夜遅くなっても、伊波くんは絶対に起きて待っていてくれるから。

おかえりなさい、待ってました、とふんわり笑って、私を出迎えてくれない日はないから。


優しい明かりがともっている部屋に帰れることが、どれほど私を慰めてくれるかなんて、私が一番分かっている。


帰ってきてくださいね、と言ってくれる伊波くんは優しい。


自分の部屋以外の帰る場所がある幸せに、私は随分救われているのも、私が一番分かっている。


「ね、伊波くん」


だけど、もうちょっとだけ。


次は頑張るから、もうちょっとだけ甘えてもいいかな。


「迎えに来てくれたり……、する?」