強張った顔と低い声で、少しだけ切なげな呟きが落とされた。


——当然、心配に決まってるでしょう。


そんな副音声も同時に浮かんで、きゅう、と心臓が跳ねて縮んだ。


「……うん。うん。ごめん。ごめん伊波くん。馬鹿なこと言った」


疲れて回らない頭が急激に冴える。


いくら嫌だから、疲れてるから、甘えたいからって、あんまりにも伊波くんに失礼なことを言った。


甘えと疑いは違うのだ。


私が今言ったのは、甘えに装っただけの疑いと愚痴だった。


伊波くんは何も言わないけど、あまり私が飲み会に行くのが好きじゃない。


私ももちろん好きじゃない。


大抵の飲み会は金曜日から日曜日のどれかに入るから、伊波くんとの時間が減ってしまう。


人付き合い、というものはどうしても必要だ。


特にうちの上司はお酒が強くて好きで、飲みニケーションとやらを推している。


お酒は好きだけど、もっと親しい人と美味しく楽しく飲みたい私としては、少しだけ不満なのだった。


飲まないと駄目、なんて意味不明な価値観だと思うし。


女子だからなんて理由でお酌させられるのも、分かりやすい気配りをさせられるのも、……セクハラまがいの絡み酒も不満だ。


伊波くんは、何も言わない。


ここのところ飲み会続きで会えない日が続いているのを、責めたり催促したりしない。


だけど、ほんの少しだけ、強気な言葉にくるんでこぼされた小さな本音に、ごめんね、ともう一度言った。